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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

「宮様おかくれにござりまする! ……御首級が御首級が!」

「誠か!」

と頼春は洞然と云った。

「御首級が? 宮家の御首級が?」

「坊様持たれましてござりまする!」

「ハ――ッ」

と頼春は五臓を絞った、苦しい重い息を吐いた。

「未来永劫土岐頼春、裏切り者の罪許されぬそうな!」

しかしその時、南の方が、歓喜の声で叫ぶように云った。

「お喜びなされ頼春殿とやら、宮様まさしくそなたの罪を、今こそお許しなされましたぞ! ……怒りの眼を見ひらかれ、猛々しくおわした宮様の御顔が、ご覧なされ、御眼を閉じられ、一切の罪も悪業も、許すぞとばかりの慈悲円満の、ご相好になられました!」

「おおいかさまお言葉どおりじゃ」

と、宮家の御首級を胸に抱き、両手に捧げていた理智光院も云った。

「このご相好、さながら御神じゃ! ……いやさながら御仏じゃ! ……罪障消滅、無差別絶体! 自他の罪ことごとく許された御顔……笑っていられます、微笑んでいられます!」

まことこの時東の空が、薔薇色の光を産み出したが、その光に照らされた、大塔宮様の御顔は、依然として生き身さながらであったが、見ひらかれておわした御眼は閉ざされ、食いしばっていられた御唇は、優しく穏やかにむすばれていた。