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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《すみだ川・新橋夜話 他一篇(すみだがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,378 字 · 88 頁
二
それのみならず、いつぞやお糸が病気で十日ほども寝ていた時には、長吉は外目も可笑しいほどにぼんやりしていた事などを息もつかずに語りつづけた。
次の間の時計が九時を打出した時突然格子戸ががらりと明いた。その明けようでお豊はすぐに長吉の帰って来た事を知り急に話を途切しその方に振返りながら、
「大変早いようだね、今夜は。」
「先生が病気で一時間早くひけたんだ。」
「小梅の伯父さんがおいでだよ。」
返事は聞えなかったが、次の間に包を投出す音がして、直様長吉は温順しそうな弱そうな色の白い顔を襖の間から見せた。
二
残暑の夕日が一しきり夏の盛よりも烈しく、ひろびろした河面一帯に燃え立ち、殊更に大学の艇庫の真白なペンキ塗の板目に反映していたが、忽ち燈の光の消えて行くようにあたりは全体に薄暗く灰色に変色して来て、満ち来る夕汐の上を滑って行く荷船の帆のみが真白く際立った。と見る間もなく初秋の黄昏は幕の下るように早く夜に変った。流れる水がいやに眩しくきらきら光り出して、渡船に乗っている人の形をくっきりと墨絵のように黒く染め出した。堤の上に長く横わる葉桜の木立は此方の岸から望めば恐しいほど真暗になり、一時は面白いように引きつづいて動いていた荷船はいつの間にか一艘残らず上流の方に消えてしまって、釣の帰りらしい小舟がところどころ木の葉のよう