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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《すみだ川・新橋夜話 他一篇(すみだがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,378 字 · 88 頁
五
それにもかかわらず、自分の母親のお豊はあまり好くは思っていない様子で、盆暮の挨拶もほんの義理一遍らしい事を構わず素振に現していた事さえあった。長吉は此処で再び母親の事を不愉快にかつ憎らしく思った。殆ど夜の目も離さぬほど自分の行いを目戍っているらしい母親の慈愛が窮屈で堪らないだけ、もしこれが小梅の伯母さん見たような人であったら――小梅のおばさんはお糸と自分の二人を見て何ともいえない情のある声で、いつまでも仲よくお遊びよといってくれた事がある――自分の苦痛の何物たるかを能く察して同情してくれるであろう。自分の心がすこしも要求していない幸福を頭から無理に強いはせまい。長吉は偶然にも母親のような正しい身の上の女と小梅のおばさんのような或種の経歴ある女との心理を比較した。学校の教師のような人と蘿月伯父さんのような人とを比較した。
午頃まで長吉は東照宮の裏手の森の中で、捨石の上に横わりながら、こんな事を考えつづけた後は、包の中にかくした小説本を取出して読み耽った。そして明日出すべき欠席届にはいかにしてまた母の認印を盗むべきかを考えた。
五
一しきり毎日毎夜のように降りつづいた雨の後、今度は雲一ツ見えないような晴天が幾日と限りもなくつづいた。