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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《すみだ川・新橋夜話 他一篇(すみだがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,378 字 · 88 頁
さして年老っているというでもない。無論明治になってから生れた人であろう。自分は何の理由もなく、かの男は生れついての盲目ではないような気がした。小学校で地理とか数学とか、事によったら、以前の小学制度で、高等科に英語の初歩位学んだ事がありはしまいか。けれども、江戸伝来の趣味性は九州の足軽風情が経営した俗悪蕪雑な「明治」と一致する事が出来ず、家産を失うと共に盲目になった。そして栄華の昔には洒落半分の理想であった芸に身を助けられる哀れな境遇に落ちたのであろう。その昔、芝居茶屋の混雑、お浚いの座敷の緋毛氈、祭礼の万燈花笠に酔ったその眼は永久に光を失ったばかりに、かえって浅間しい電車や電線や薄ッぺらな西洋づくりを打仰ぐ不幸を知らない。よしまた、知ったにしても、こういう江戸ッ児はわれら近代の人の如く熱烈な嫌悪憤怒を感じまい。我れながら解せられぬ煩悶に苦しむような執着を持っていまい。江戸の人は早く諦めをつけてしまう。すぐと自分で自分を冷笑する特徴をそなえているから。
高い三の糸が頻りに響く。おとするものは――アと歌って、盲人は首をひょいと前につき出し顔をしかめて、