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ゆだんたいてき

ゆだん大敵

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《ゆだん大敵(ゆだんたいてき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,664 字 · 41 頁

青空文庫

そんなことを云わずにと諍っているところへ、賢七が来たのである。……横堀と聞いて四人がはたと黙り、眼を見合せているところへずかずかと賢七がはいって来た。

「四人揃っていて好都合だ」

かれはそこへずっと坐りながら、まるで挑みかかるように云った。

「……些か思うところあって来た、いやおうは云わさぬ、四人とも免許のゆるし書を拝見させて貰うぞ」

四人はもういちど眼を見交わした。賢七の来たことが、結局は話を早く片付けることになった。気の早い田口求馬が、まるで五重塔のてっぺんから跳下りるような、悲壮な眼つきをして、

「よし、ではまず拙者のを披露しよう」

そう云い、用意して来たらしいゆるし書をとりだして、厳かにそこへ披げた。四人の眼はいっせいにその紙上に集った。そしてみごとな墨色で記してある五文字を読んだ。

……ゆだん大敵。

誰からともなくあっという叫びが漏れた。そして藤吉郎が立ってゆき、自分のゆるし書を持って来て、そこへ黙って披げた、「ゆだん大敵」である、甚右衛門が呟くように、

「……なるほど」と云った。

早川駿五郎はうーむと呻った。それなり茫然と黙ってしまった四人の顔を、どこか疑わしげな眼で順々に眺めまわしていた賢七は、大槻も早川も同じ物を貰ったに違いないと察し、いきなりわはははと笑いだした。