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チェーホフのたんぺんについて
カシタンカ・ねむい 他七篇
神西 清
線上閱讀神西 清《カシタンカ・ねむい 他七篇(チェーホフのたんぺんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,418 字 · 92 頁
例えば『おくれた花』という小説を見るがいい。これはかなり大型な作品で、二十二歳春の作である。ある令嬢がかかりつけの田舎医者に恋する。さんざん躊躇したあげくにやっと意中を打明けるが、その頃は肺病がよほど進んでいる。医者は自分の精神的堕落を顧みて、この令嬢の告白を頗る持てあますが、とどのつまり彼女をつれて南仏へ転地旅行に出かける。ところが彼女は転地先に着いて三日もたたぬうちに死ぬ。「秋もふけては花も咲かない」のである。この物語からわれわれは容易に『イオーヌィチ』(一八九八)という晩年に近い作品を思い出すだろう。これも令嬢と田舎医者の物語である。令嬢がピアノを弾くのも両者を通じて同じだ。医者の精神的堕落も同じである。ただ片恋の方向が、まず医者から令嬢へ、やがて令嬢から医者へと、イスカの嘴になっているだけで、最後に病身になった令嬢が母と二人で静養に出かけるところも同工異曲といえる。『イオーヌィチ』には勿論前者に見られない凝縮と重厚さがあるが、作を支配する暗い気分は殆ど同じであって、要するに後者は前者の改作と言ってもいいほどである。して見れば二十二歳のチェーホンテは、三十八歳のチェーホフの作品をすでに書いていたということになる。