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したやそうわ

下谷叢話

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《下谷叢話(したやそうわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 122,971 字 · 246 頁

青空文庫

第二十四

わたくしはこの律詩をここに録しながら反復してこれを朗吟した。何となればわたくしは癸亥震災以後、現代の人心は一層険悪になり、風俗は弥頽廃せんとしている。此の如き時勢にあって身を処するにいかなる道をか取るべきや。枕山が求むる莫れ杜牧兵を論ずるの筆。かつ検せよ淵明が飲酒の詩。小室に幃を垂れて旧業を温めん。残樽断簡これ生涯。と言っているのは、わたくしに取っては洵に知己の言を聴くが如くに思われた故である。

安政紀元十二月二十八日の夜、酉の下刻、神田多町二丁目北側の乾物屋三河屋半次郎の店から発火して南の方日本橋まで延焼した。横山湖山がお玉ヶ池の家はその門と塀とを燬かれた。

第二十四

安政二年乙卯の歳、枕山が元旦の絶句に「一処無恙六迎春。」〔一処恙無ク六タビ春ヲ迎フ〕の語を見る。三枚橋に新居を築造してから六年目の春を迎えたのである。

正月七日毅堂は久留里の藩主黒田淡路守直質に謁し五古一篇を賦して奉った。『六名家詩鈔』に載せられたこの作には干支を記していないが、「新春値新政。我公襲封年。」〔新春新政ニ値フ/我ガ公襲封ノ年〕の二句によって、わたくしは直質が去年六月に襲封してその翌年の正月であるように解釈したのである。