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したやそうわ

下谷叢話

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《下谷叢話(したやそうわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 122,971 字 · 246 頁

青空文庫

尤此十年許りは余程中風めきて危く見え、且耳も遠くなり居られ候故、長くは持つまじと思ひ/\是迄無事なりしは不幸中の幸なりき。小生は少年の頃隣家に住ひ居りし故能く人品を存じ居候が、翁は実に迂人にて世間利口に立廻る学者の様でなく誠に貴き所有之人なりき。其内閑を得たらんには一筆し置度存候。」と言っている。

信夫恕軒の作った枕山の伝は最よくその為人を知らしむるものである。その一節に曰く「先生年已ニ七十。嗣子遊蕩ニシテ家道頓ニ衰フ。人アリ慫慂シテ曰ク高齢古ヨリ稀ナリ。ケダシ賀寿ノ筵ヲ設ケテ以テソノ窮ヲ救ヘト。先生曰ク、中興以後世ト疎濶ス。彼ノ輩名利ニ奔走ス。我ガ唾棄スル所。今ムシロ餓死スルモ哀ミヲ儕輩ニ乞ハズト。晩年尤モ道徳ヲ重ズ。人ト談論スルニ経史ニ非ザレバ言ハズ。最忠孝節義ノ事ヲ喜ブ。々トシテ聴クベシ。」と。また曰く、「平素他ノ嗜好ナシ。終日盃ヲ手ニシ、詩集ヲ繙ク。尚古人ヲ友トス。看花玩月ノ外復門ヲ出デズ。貌ハ痩セテ長シ。首髪種々タルモナホ能ク髻ヲ結ブ。一見シテ旧幕府ノ逸民タルヲ知ル。」云々。枕山は晩年に至るまで髷を結んでいたのである。

明治二十六年十二月に至って枕山の女嘉禰が亡父晩年の作を編成し『枕山先生遺稿』