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せかいのいっかんとしてのにほん

世界の一環としての日本

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《世界の一環としての日本(せかいのいっかんとしてのにほん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,338 字 · 422 頁

青空文庫

しかも牽強付会される個々のタームは極めて実証的な引例や経験に基いているというわけだ。だが、とにかく解釈学と雖も、さすがにここまで来ると、フィロロギーでは役立たぬと見える。

そして博士は云うのだ、「我々はかかる風土に産まれたという宿命の意義を悟り、それを愛しなくてはならぬ」、「ロシア的日本人」などになってはならないのだと。誰か自分の運命を愛しないものがあろう。自分を愛せよ、と云う場合には、すでに何かの伏線があるのだ。つまり、その愛し方に或る注文をつけているのだ。――だが、なぜ、博士はそういうことをわざわざ云いたくなるのだろうか。風土をああいうような観念として強調したくなるのであろうか。根本的な理由は極めて簡単だ。科学的な分析は日本的現実を分析し得ないという、極めて卑俗な迷信がそれだ。

この迷信は、しかし決して和辻哲郎博士だけのものではない。今日の大部分の曖昧思想家や曖昧文士のアラ・モードの意匠が之なのであり、粉黛が之なのである。だがこの粉黛こそは却って、日本なる彼女の愛嬌を著しく殺減する随一のものだ、ということを思わねばならぬ。

風土を見出したこと、風土から日本を見たこと、之は和辻氏の没することの出来ない業績だろう。