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せかいのいっかんとしてのにほん

世界の一環としての日本

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《世界の一環としての日本(せかいのいっかんとしてのにほん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,338 字 · 422 頁

青空文庫

従ってそれに対比して、左翼的出版物はそれだけ多少は盛り返して来たと想像されるわけで、少なくとも所謂「マルクス主義華かなりし時代」に較べてずっと地味な落ちついた形のものではあるが、却って堅実な弾力を見せて来たと見ていいようだ。一九三四年の末から三五年の上半期にかけてそういう調子が見られたと一般に云われている。「社会」関係の書物が満州事変以後再び下り坂になったに反して、社会問題の基礎的な問題をなすべき経済関係の出版物の口数は、一九三五年になると一九三一年の約一五〇パーセントにまで続騰して来ている。つまり皮相な関心が引き潮になった代りに、基本的な関心が著しく地道に伸びて来たことを示すことになるのだ。特に統計関係の出版物の如きはこの四年間に二倍以上も出るようになった。日本主義を云々するフラーゼオロギーやデマゴギーに全く飽きて了った読者は、そうしたものに懐疑の眼を向け始めたために、再び出版界乃至読書界は社会機構の堅実な分析に沈潜し始めたわけだ。

この事情は独り社会科学関係に限らず、哲学に就いても推測されるのだが、併し云うまでもなく哲学書(それも亦四年間に二倍になっている)の増加は、反社会科学的出版物の擬装物を多分に含んでいるわけだから、この統計だけからは何とも云うことは出来ない。