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ちゅうごくかいきしょうせつしゅう

中国怪奇小説集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 179,458 字 · 363 頁

青空文庫

餅二枚

霍丘の令を勤めていた周潔は、甲辰の年に役を罷めて淮上を旅行していました。

その頃、ここらの地方は大饑饉で、往来の旅人もなく、宿を仮るような家もありませんでした。高いところへ昇って見渡すと、遠い村落に烟りのあがるのが見えたので、急いでそこへたずねて行くと、一軒の田舎家が見いだされました。

門を叩くと、やや暫くして一人の娘が出て来ました。周は泊めてもらいたいと頼むと、娘は言いました。

「家じゅうの者は饑餓に迫り、老人も子供もみな煩らっていますので、お気の毒ですがお客人をお通し申すことが出来ません。ただ中堂に一つの榻がありますから、それでよろしければお寝みください」

周はそこへ入れてもらいますと、娘はその前に立っていました。やがて妹娘も出て来ましたが、姉のうしろに隠れていてその顔を見せませんでした。周は自分が携帯の食事をすませて、女たちにも餅二つをやりました。

二人の女はその餅を貰って、自分たちの室へ帰りましたが、その後は人声もきこえず、物音もせず、家内が余りに森閑としているので、周はなんだかぞっとしたような心持になりました。夜があけて、暇乞いをして出ようと思いましたが、いくら呼んでも返事をする者がありません。