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えいがをつくるはなし

中谷宇吉郎集 第三巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第三巻(えいがをつくるはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,667 字 · 95 頁

青空文庫

美事な結晶が来たので、すぐ上からの写真を撮って、さてこれだけは何とかして巧く立てようとあせったが、なかなか思うようには行かない。つい大声で「H君、マッチ」と呼んだら、H君が慌ててライターを渡してくれたが、これではどうにもしようが無い。とんだところでマッチ飢饉に祟られたものである。

その写真もどうにか撮れた。まあ今度の十勝行も一ヶ月の時日をかけただけのことはあった。そして今更のように、自然というものは、いくら見ても見つくせるものではないという感慨を深めて、芽出度く引き上げることにした。

すっかり器械を荷造りして二台の馬橇に積み込み、顕微鏡と乾板とは、私が大切にかかえて、今一台の馬橇に乗った。若い人たちはスキーをはいて一気に山を下ろうというのである。麓の中茶屋まで、スキーで行けば十五分で達するとかいう意気込みであった。

山を出たら、又十勝の原野の烈風に遭った。三月の大きい雪片が水平に飛び、名も知らぬ冬木立が鋭い音を立てていた。スキーの連中は、馬橇に縄をつけて、それにつかまって滑って来る。この馬スキーは余程愉快らしく、眼もあけられない吹雪を真正面に受けながらも、何か大きい笑い声を立てている。