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えいがをつくるはなし

中谷宇吉郎集 第三巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第三巻(えいがをつくるはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,667 字 · 95 頁

青空文庫

実際低温室内で作った樹枝状結晶の多くのものは、その通りになっているのである。それで天然の雪についても、上からと横からと撮った一組の写真が沢山欲しいので、一ヶ月の観測の間に、機会ある毎に撮ることにしてあった。

ところが鼓や立体の結晶とちがって、この厚さが百分の一ミリ程度の薄い繊細を極めた結晶を、顕微鏡下に立てるのは随分厄介で、なかなか良い写真は撮れなかった。私も五年前の習練を思い出すべく、木片の端をちぎってささくれを作り、その先に結晶を吊して、その結晶の一端を硝子面に唾の小滴で垂直に凍りつかせようと大わらわであった。初めのうちはどうも勝手が悪かったが、そのうちにやっと筋肉が昔のこつを思い出してくれたようであった。H君と二人で、顕微鏡を二台並べて、その前で各々が硝子板に載った雪の結晶を、木片のささくれで吊し上げようとそれぞれ懸命になっている姿は、余所から見たら少々滑稽なことだったろうと思う。

どうも調子が出ないので、気が付いたことは、昔はマッチの軸木の頭を折ったものを使っていたのである。剣橋の大学では、マッチと封蝋とさえあれば、物理学の第一線を行く研究が出来ると威張った時代もあったが、マッチの棒くらい便利なものは少いようである。