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けんのよんくんし
剣の四君子
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣の四君子(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 頁
七
そう考えて、彼は自嘲の一詩を旅の記に賦し、故郷の産土神の前に額ずき、嬰児にかえったような心で、
「我に、前人未踏の剣の極理を授けたまえ」
と、すがった。
彼の誓願は、
「人の末流を汲まんより、われ自ら一流の祖たらん」
というにあった。
諸国の剣人の実状を見、また、いよいよ剣磨の時代の必然を、社会に視て来たからであった。
勝敗は髪一すじである。
間の遅いか迅いかで勝敗はすでに決する。
剣のあつかい、間あい、心胆の工夫をした達人は尠しとしない。
けれど、勝負に立つ、まず間髪の勝目を電瞬にとる工夫をした者はかつてない。
刀はすべて鞘にある。
刀が鞘を脱する時、勝負はすでにつきかけている。いや、勝目を掴む機があるはずである。
抜刀の法だ。練磨だ。
それを研究しよう。究めて神に入り、そこの極理を掴もう。
甚助の誓願にかかった端緒は、実にそこにあった。
七
初め、木の皮も喰いたいような飢餓に襲われた。それがやむと、時折、胃ぶくろが暴れて苦悶した。それに馴れると、妄念が起った。肉体の疲労が、自分の踏む足にもわかった。そこを超えると、自己が分らなくなった。
五、六十日頃から、ようやく、