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けんのよんくんし

剣の四君子

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣の四君子(けんのよんくんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,514 字 · 22 頁

青空文庫

九

刀を拭って、また待った。

次の三人も、一颯に斬った。

甚助は、心で、

(母上。これです)

と、叫びたかった。

林崎明神の神前に額いて、母から、百日の参籠と精進のうちに、何か、神の御霊現はなかったかと問われた時、云い現わすべき言葉がないので、

(べつに、何も覚えませぬ)

と答えたが、その云い現わせないものを、彼は今、紛れない事実の上に、また、無意識な行動の上に、間違いなく自己の相として、現わしていることを思ったのであった。

「何だ?」

「どうしたと?」

門外の異変に気がついて、茨組の総勢一かたまりとなって、やがて甚助の前後へ、真っ黒に躍りかかって来た。

信国の刀は、月下に十数箇の死骸を積み、大地を碧い血に光らせた。

かなわじと余の者は怖れて逃げたが、その騒動も片づいて、翌日、北山家を辞し去った彼を、道に待っていたらしいその夜の茨組の男三名が、

「しばらく」

と、並木の蔭から呼びとめた。

九

呼び止めた男は、茨組の沼沢甚右衛門、葦沢弥兵衛、桜場隼人などだった。見れば大地へ姿を揃えて平伏している。そして誠意を示して云うのだった。

「御門下の端に加えていただきたい。