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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
山気は二人の身にしみて、翌朝もまた霜かと思わせた。
追分の宿まで行くと、江戸の消息はすでにそこでいくらかわかった。同行三人のものは、塩尻、下諏訪から和田峠を越え、千曲川を渡って、木曾街道と善光寺道との交叉点にあたるその高原地の上へ出た。そこに住む追分の名主で、年寄役を兼ねた文太夫は、かねて寿平次が先代とは懇意にした間柄で、そんな縁故から江戸行きの若者らの素通りを許さなかった。
名主文太夫は、野半天、割羽織に、捕繩で、御領私領の入れ交った十一か村の秣場を取り締まっているような人であった。その地方にある山林の枯れ痛み、風折れ、雪折れ、あるいは枝卸しなどの見回りをしているような人であった。半蔵らはこの客好きな名主の家に引き留められて、佐久の味噌汁や堅い地大根の沢庵なぞを味わいながら、赤松、落葉松の山林の多い浅間山腹がいかに郷里の方の谿と相違するかを聞かされた。曠野と、焼け石と、砂と、烈風と、土地の事情に精通した名主の話は尽きるということを知らなかった。
しかし、そればかりではない。半蔵らが追分に送った一夜の無意味でなかったことは、思いがけない江戸の消息までもそこで知ることができたからで。