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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
そればかりではない。京都麩屋町の染め物屋で伊勢久と言えば理解のある義気に富んだ商人として中津川や伊那地方の国学者で知らないもののない人の名が、この正香の口から出る。平田門人、三輪田綱一郎、師岡正胤なぞのやかましい連中が集まっていたという二条衣の棚――それから、同門の野代広助、梅村真一郎、それに正香その人をも従えながら、秋田藩物頭役として入京していた平田鉄胤が寓居のあるところだという錦小路――それらの町々の名も、この人の口から出る。伊那から出て、公卿と志士の間の連絡を取ったり、宮廷に近づいたり、鉄胤門下としてあらゆる方法で国学者の運動を助けている松尾多勢子のような婦人とも正香は懇意にして、その人が帯の間にはさんでいる短刀、地味な着物に黒繻子の帯、長い笄、櫛巻きにした髪の姿までを話のなかに彷彿させて見せる。日ごろ半蔵が知りたく思っている師鉄胤や同門の人たちの消息ばかりでなく、京都の方の町の空気まで一緒に持って来たようなのも、この正香だ。
「そう言えば、青山君。」と正香は手にした木盃を下に置いて、膝をかき合わせながら言った。「君は和宮さまの御降嫁あたりからの京都をどう思いますか。