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ぜにがたへいじとりものひかえ

奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,249 字 · 62 頁

青空文庫

八五郎は躍起となるのです。

「だが、そんなに閉りの厳重な部屋へ、人殺し野郎は入れるわけはないだろう」

「だから変なんですよ、あの部屋は鼠一匹入れやしません。どこか隙間から、鉄砲なら射込めるかもしれないが、傷は間違いもなく突き傷だ。死骸の傍にはヒョロヒョロの細い短刀が転げているが、血も付いちゃいません」

「はてね?」

平次も首を捻りました。

「それに、中年の女が自害でもしようという時、あんな恰好はしていませんよ。人に見られちゃ極りが悪いから、晴着くらいは引っかけて、化粧かなんかして、それから取りかかるのが、死出の旅路とやらでしょう」

「たいそう高慢なことを知ってるんだな」

「浄瑠璃で聴いた文句ですよ、――ところが平松屋の内儀のお駒は、部屋の真ん中に床を敷いて、自分は奥の方の壁寄りに、少し継の当った寝巻を着て、見栄も気取もなくブッ倒れているじゃありませんか」

「短刀はどこにあったんだ」

「死骸とは二間も離れて、これも閉めたままの窓の下、間に床が敷いてあるし、自害をしたものなら、あんなところへ刃物を投げるわけはありません。第一傷が物凄くて、あんなヒョロヒョロの短刀なんかじゃありませんよ」