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ぜにがたへいじとりものひかえ

奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,249 字 · 62 頁

青空文庫

「どこを切ったんだ」

「喉笛、少し右寄り、前から後ろへ突き抜けるほどの傷で――部屋の中には血の気もない短刀が一つ」

「フーム、だいぶ変っているな、行ってみよう」

「そいつは有難い」

平次はさっそく仕度に取かかり、本郷二丁目に向いました。明神下からは遠くないところですが、それでも、ゆくゆく八五郎の知ってるだけの話は引出せます。

「そのとき家中の者はみんな揃っていたのか」

「主人の平松屋源左衛門だけは留守でした。内儀が死ぬ少し前に出かけたそうで」

「どこへ行ったんだ」

「さいしょはみんな顔を見合せて言いませんでしたよ、妾のお万に遠慮したんですね。でも、下女のお鉄がとうとう口を割りましたよ。近ごろ妻恋町に新しく囲った女があるんですって。さっそく使をやって呼び戻しましたがね。お万という女はまた、妾の癖に女房気取りで、途方もない焼餅ですね」

「主人が出かけた時刻を、確かに知ってる者があったのか」

「お君さんが知っていましたよ。亥刻(十時)の鐘が鳴りはじめると一緒に、源左衛門が出かけたから、それを見定めて、そっと蔵の蔭に廻り、あっしに逢いに来たというんで」

八五郎は肩を縮めた様子です、またも逢引らしい心持を思い出したのでしょう。