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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《孤島の鬼(ことうのおに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 頁

青空文庫

と云いたいのです。そうすると、いくらか胸が楽になるのです。

私は悲しい心が話したいです。けれども、話す人がありません。ここへ来る人は、私よりもずっと年の多い、毎日歌を教えに来る助八さんという、この人は自分のことを「お爺」と云っています。お爺さんです。それから、物の云えない、(唖というのです)三度ずつ、御飯を運んでくれるおとしさんと、(この人は四十歳です)二人丈けで、おとしさんは駄目にきまっているし、助八さんもあんまり物を云わない人で、私が何か聞くと、目をしょぼしょぼさせて、涙ぐんでばかりいますから、話しても仕方がありません。その外には自分丈けです。自分でも話せるけれど、自分では気が合わないので、云い合いをしている程、腹が立って来ます。もう一つの顔が何ぜこの顔と違っているのか、なぜ別々の考え方をするのか、悲しくなるばかりです。

助八さんは、私を十七歳だと申します。十七歳とは、生れてから、十七年たったことですから、私はきっと、この四角な壁の中に十七年住んでいたのでしょう。助八さんが来るたんびに、日を教えて下さいますから、一年の長さは少し分りますが、それが十七年です。