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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《孤島の鬼(ことうのおに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 頁

青空文庫

そして、とうとう一本の棒の片方丈けはずしてしまいましたが、すぐ助八さんに見つかって、一日ご飯がたべられませんでした。

(中略)

どうしても、こうしても、土蔵の外へ出ることは出来ないと、思ってしまいましたら、悲しくて、悲しくて、暫くの間は、私は毎日毎日、背のびをして、窓の外ばかり見て居りました。

海はいつもの様に、キラキラと光って居りました。原っぱには、何もなくて、風が草を動かして居りました。海の音がドウドウと、悲しく聞えて居りました。あの海の向うに世界があるのかと思いますと、鳥の様に飛んで行けたらいいでしょうと思いました。けれども、私みたいな片輪者が、世界へ行きましたら、どんな目に合わされるか知れないと思いますと、怖くなりました。

海の向うの方に、青い山の様なものが見えて居ります。助八さんがいつか、「あれは岬というもので、ちょうど牛が寝ている形だ」と申しました。牛の絵は見たことがありますが、牛が寝たらあんな形になるのかしらんと思いました。又、あの岬という山が、世界の端っこか知らんと思いました。遠くの遠くの方を、いつまでもじっと見ていますと、目がぼうっとかすんで来て、知らぬ間に涙が流れています。