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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《孤島の鬼(ことうのおに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 頁
「渦でもあるの」
「渦という訳でもないが、何やらありますのじゃ。一番近くでは、十年ばかり前にのんし、こんなことがありましたげな」
と云って、老漁夫は次の様な、奇妙な話をしたのである。
それはこの老漁夫ではなくて、知合いの別の漁師の実見談なのだが、ある日、目のギョロギョロしたみすぼらしい風体の男が、飄然とK港に現われて、丁度今の私達の様に、岩屋島へ渡った。その時頼まれたのがその漁師であった。
四五日たって、同じ漁師が夜網の帰りがけ、夜のしらじら明けに、偶然岩屋島の洞穴の前を通りかかると、丁度引汐時で、朝凪ぎの小波が、穴の入口に寄せては返す度毎に、中から海草やごもくなどが、少しずつ流れ出していたが、それに混って、何だか大きな白いものが動いているので鮫の死骸かと見直すと、驚いたことには、それが人間の溺死体であることが分った。身体全体はまだ穴の中にあって、頭部からソロソロと流れ出しているのだ。
漁師はすぐ様舟を漕ぎ寄せて、そのお客様を救上げたが、救上げて二度びっくりしたことにはその溺死体は、まぎれもなく、先日K港から渡してやった旅の者であった。
多分崖から飛込んで自殺をしたのだろうということで、そのままになってしまったが、古老の話を聞くと、その洞穴は昔からの魔所で、いつの場合も、溺死体は半分身体を洞穴に入れて、丁度