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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《孤島の鬼(ことうのおに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 頁
それにしても、彼は腕力で親達に手向う積りなのであろうか。
長い長い間、私は岩蔭にすくんでいた。暑い日だった。岩の日蔭ではあったけれど、足下の砂が触れない程焼けていた。いつもは涼しい浜風も、その日はそよともなく、波の音も、私自身が聾になったのではないかと怪しむ程、少しも聞えて来なかった。何とも底知れぬ静寂の中に、ただジリジリと夏の日が輝いていた。
クラクラと眩暈がしそうになるのを、こらえこらえして、じっと土蔵の窓を見つめていると、とうとう合図があった。鉄棒の間から、腕が出て、二三度ヒラヒラと上下するのが見えた。
私は矢庭に駈け出して、土塀を一廻りすると、表門から諸戸屋敷へ踏み込んで行った。
玄関の土間へ這入って、奥の方を覗いて見たが、ヒッソリとして人気もない。
仮令対手は片輪者とは云え、奸智にたけた兇悪無残な丈五郎のことだ、諸戸の身の上が気遣われた。あべこべにひどい目に会っているのではあるまいか、邸内が静まり返っているのが何となく不気味である。
私は玄関を上って、曲りくねった長い廊下を、ソロソロとたどって行った。
一つの角を曲ると、十間程も続いた長い廊下に出た。