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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《孤島の鬼(ことうのおに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 頁

青空文庫

「満潮の水面と、この洞穴の天井と、どちらが高いでしょう」

私は手探りで、諸戸の腕を掴んで叫んだ。

「僕も今それを考えていた所だよ」諸戸は静かに答えた。「それには、僕達が降った坂道と、昇った坂道と、どちらが多かったか、その差を考えて見ればいいのだ」

「降った方が、ずっと多いじゃありませんか」

「僕もそんなに感じる。地上と海面との距離を差引いても、まだ降った方が多い様な気がする」

「すると、もう助かりませんね」

諸戸は何とも答えなかった。私達は墓穴の様な暗闇と沈黙の中に茫然と立ちつくしていた。水面は、徐々に、だが、確実に高さを増して、膝を越え、腰に及んだ。

「君の智恵で何とかして下さい。僕はもう、こうして死を待っていることは、耐えられません」

私は寒さにガタガタ震えながら、悲鳴を上げた。

「待ち給え、まだ絶望するには早い。僕はさっき、蝋燭の光でよく調べて見たんだが、ここの天井は上に行く程狭く、不規則な円錐形になっている。この天井の狭いことが、若しそこに岩の割目なんかがなかったら、一縷の望みだよ」

諸戸は考え考えそんなことを云った。私は彼の意味がよく分らなんだけれど、それを問い返す元気もなく、今はもう腹の辺までヒタヒタと押し寄せて来た水に、ふらつきながら、諸戸の肩にしがみついていた。