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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《孤島の鬼(ことうのおに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 頁
彼は黒山の様に群がった弥次馬のうしろから、じっと深山木の死体に目を注いでいた。死体を運んでいる時にも、私は絶えずうしろの方にもののけの様な彼の気配を感じていた。諸戸が殺人の行われた際、現場附近にいなかったことは明かなのだから、彼を疑うべき何等の理由もなかったのだけれど、それにしても、諸戸のこの異様な挙動は、一体何を意味したのであろうか。
それから、もう一つ記して置かねばならぬのは、さして意外な事でもないが、深山木を運んで彼の家に這入った時、たださえ乱雑な彼の居間が、まるで嵐のあとみたいに、滅茶苦茶に取散らされているのを発見したことである。云うまでもなく、曲者が例の「品物」を探す為に、彼の留守宅へ忍込んだものに相違なかった。
無論私は検事の詳細な取調べを受けたが、その時私は凡ての事情を正直に打開けたけれども、虫が知らせたとでも云うのか(この意味は後に読者に明かになるであろう)深山木が脅迫状に記された「品物」を私に送ったことだけは、態と黙って置いた。その「品物」について質問されても、ただ知らぬと答えた。
取調べがすむと、私は近所の人の助けを借りて、死者と親しい友人達に通知を出したり、葬儀の準備をしたり、色々手間取ったので、あとを隣家の細君に頼んで、やっと汽車に乗ったのは、もう夜の八時頃であった。