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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁
だがそれは、大裾野を忘れているからだ。裾野は富士の物だ、富士のものを富士に返して、東海の浜にまで引き下り、さて仰いで見たまえ。それから数十里の裾野を、曲馬の馬が、同じ円周を駆けめぐるように、廻って見たまえ。それこそ富士という彫刻品の、線と面の回転だ、そこに驚くべき変化と偉大さを発見するだろう。
あるいは一歩さかのぼって、裾野がいまだ生成しないうち、富士と、愛鷹と、箱根が、陥没地帯の大海原に、火山島のように煙を吐いて、浮かんでいたところを想像すれば、今日の豆南諸島の大島、利島、三宅島などが、鋪石のように大洋に置かれているのと似て、更に大規模なる山海の布置を構成するであろう。今のような裾野となって、富士の登山が一しお悦ばれるのは、絨氈を布く緑青の草と、湿分を放散する豊富な濶葉樹林とにあろう。旅人がアンデスの登山を悦ぶのは、麓が永久の春であるからだそうだが、山の天国は、発達した裾野を有するところの、富士火山帯に多くあらねばならない。それから山の全裸体像として、線や、光や、影や、円味やを研究するのに、富士ぐらい秘密を許してくれる山はあるまい。縦横はもとより、富士ばかりは恐らく螺旋状にでも上れよう。