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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁
すぐにではない、まず小橋与力に会釈し、与力が(また新しい人物の現われたことに)吃驚して、眼をしばしばさせているうち、来太のほうへおもむろに向きなおった。
「いま控えで聞いていると、しきりに御大老ということを云っておられたが、御大老とは誰をさすのですか」
「御大老が誰をさすかって」来太は歯を剥いた、「いったい貴公はなんだ」
平四郎は黙って相手を見た。呼吸五つばかりのあいだ、上から見おろすように、なんの表情もなく見まもった。それから、穏やかに云った。
「関役人に対しては、言葉を慎んで答えて下さい、そこもとのいう御大老とは、誰びとをさすのですか」
「云うまでもない、柳沢美濃守さまだ」
「それはおかしい、なにかの間違いではないか」
口ぶりは穏やかであるが、その調子には重さと力がこもっていた。眼はまっすぐに相手を見たまま、平四郎はゆっくりと云った。
「元禄十三年三月、井伊侯が辞任されて以来、大老に仰せつけられた人のあることを聞かない、柳沢侯は元禄十一年、老中首席に仰せつけられたが、決して大老ではない筈だ、いつ大老に仰せつけられたか、聞きましょう」
「それは、そんなことは」