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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《或る少女の死まで 他二篇(あるしょうじょのしまで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,554 字 · 228 頁
父も母も茶がすきであった。二人で茶をのんでいるとき、私も遊び友達に飽きてしまって、よく其処へ訪ねてゆくことがあった。
私はよく母の膝に凭れて眠ることがあった。
「お前ねむってはいかん。おうちで心配するから早くおかえり。」と父がよく言った。
「しばらく眠らせましょうね。かあいそうにねむいんですよ。」
母のいう言葉を私はゆめうつつに、うっとりと遠いところに聞いて、幾時間かをぐっすりと睡り込むことがあった。そういうとき、ふと眼をさますと、わずか暫く睡っていた間に、十日も二十日も経ってしまうような気がするのであった。何も彼も忘れ洗いざらした甘美な一瞬の楽しさ、その幽遠さは、あたかも午前に遊んだ友達が、十日もさきのことのように思われるのであった。
母は私のかえるときは、いつも養家の母の思惑を気にして、襟元や帯をしめなおしたり、顔のよごれや手足の泥などをきれいに拭きとって、
「さあ、道草をしないでおかえり。そして此処へ来たって言うんじゃありませんよ。」
「え。」
「おとなしくしてね。」
「え。おっかさん。さよなら。」
私はいつも感じるような一種の胸のせまるような思いで、わざとそれを心で紛らすために玄関を馳け出すのであった。