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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《或る少女の死まで 他二篇(あるしょうじょのしまで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,554 字 · 228 頁
九
静かに私は時時姉にも会った。
「まあおとなしくなったのね。」と姉は言っていた。
「あたしお地蔵様にお詣りに来たの。あなたもゆかない。」
「行きましょう。」
私達姉弟は、境内の私の地蔵さんにおまいりをした。いつも新しい供物があがっていて、清潔ですがすがしかった。
「どこか坊さんみたいね。だんだん其気がするの。」
姉は言って笑った。
「そうかなあ。やっぱりお寺にいるからなんだね。」
私達は書院へかえると、父が出て来た。新しい父は、茶と菓子とを運ばせた。
書院はすぐ本堂の裏になっていた。
「そうして二人揃っていると、わしも子供のときを想い出す。子供のときは何を見ても楽しいものじゃ。」
父はこう言いながらお菓子をとって、
「さあ一つあがりなさい。」と、姉にすすめた。
私達三人は、うしろの川の上を渡る風に吹かれながらお茶をのんだ。
「お父さんはお茶がたいへん好きなの。」
私は姉に言った。父はにこにこしていた。
九
私のお寺の生活がだんだん慣れるにしたがって、私は心からのびやかに幸福にくらしていた。
私は本堂へ行って見たり、本堂を囲う廊下の絵馬を見たり、いろいろな起誓文を封じ込んだ額を見あげたりしていた。