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あるしょうじょのしまで

或る少女の死まで 他二篇

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《或る少女の死まで 他二篇(あるしょうじょのしまで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,554 字 · 228 頁

青空文庫

私の室は、私の静かさと清潔とを好む性癖によく適っていて、庭には葉蘭がたくさんに繁っていた。庫裏には大きな暗い榎の大樹があって、秋も深くなると、小粒な実が屋根の上を叩いておちた。

お寺には絶えずお客があった。客はたいがい信者であった。同年輩の子供をつれて来た人は、いつも私に紹介した。父は、私を自慢していた。その信者の一人で、下町の方に商いしている家の娘でお孝さんというのがあった。

その子はおばあさんに連れられてくると、いきなり父にとりすがって、

「照さんがいらしって――。」と言うのであった。

「います。さあ行っていらっしゃい。」

そのお孝さんはいつも私の室へ飛び込むように入って来た。九つになったばかりの娘であった。

私はいつも絵をかかされていた。

「もう一枚かいて下さいな。」

せがまれると、私はいつも拙い絵をかかなければならなかった。

「姉さんを呼んでいらっしゃいな。一しょに行きましょうか。」

「そうしよう。」

私達は庭の木戸から、三ツ葉や雪の下の生えている敷石づたいに、よく隣の姉さんを呼びに行った。姉さんと三人でいつも庭で遊ぶのであった。

柿の若葉のかげは涼しい風を通していて、その根許へしゃがんで話すのであった。