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せんそういがくのおじょくにふれて

戦争医学の汚辱にふれて

平光 吾一

線上閱讀平光 吾一《戦争医学の汚辱にふれて(せんそういがくのおじょくにふれて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,206 字 · 24 頁

青空文庫

私の人生第二試合は、こうして巣鴨獄中からはじまった。巣鴨出所後、私は自分の受けた苦悩の経験を生かして、最も悩み深い病人を相手として生きたいと考えたが、さいわいに今日癌研究と治療に取組む診察所に身をおくことが出来て、私は自分の残り少ない余生に本当の生き甲斐を感じている。

巣鴨に入って一年目、昭和二十二年秋に、九大事件の本格的調査と訊問が行われた。その時の調査官ミュラー大尉は私に向い「……あなたの本事件に対する事情はよく解った。しかしこの事件を未然に防ぐための努力をしなかったという責任は免れまい……」と因果を含める如く語ったことがあった。私は彼の言葉を勿論覚悟していた。

正直に言って、日本国土を無差別爆撃し、無辜の市民を殺害した上、捕縛された敵国軍人が、国土防衛に任ずる軍隊から殺されるのは当然だと思った。まして当時たゞ一人の伜をレイテ島で失った私にすれば、それが戦争であり、自然の成行きなのだと信じていた。

日本は戦いに敗れた。そして日本の主権は否定され、政府あるいは命令の主体が勝敗によって「罪」と定められれば、その命令に従った者も罪人になることは自明の理である。