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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・平家物語(しん・へいけものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 頁

青空文庫

鳥羽に住んだり、栂尾へ来たりしていたが、世間では、鳥羽僧正で通っている。叡山の天台座主もやり、三井寺にもいたという僧歴はあるが、いまどきの法師は、大薙刀を振ったり、火攻め夜討ちにも、勇敢でなければならない。僧正は、人にいっている。

『わしには、とても、喧嘩はでけん。生まれ変ってでも来ぬことには、坊主になる資格はないでの』

そこで、山荘には、坊主を置かない。青侍一名と、小舎人三人ほど、召し使っていた。

『俗のお暮しやら、法師のお住居やら、とんと、分かりませんなあ』

人が、怪しめば、僧正は、澄ましていう。

『イヤ。わしの下僕ではないよ。京の邸の者が来て泊っておるのじゃろ』

要するに、僧正の生活は、方便に従っているものだろう。また、親ゆずりの横着者ともいえなくはない。

僧正の親は、僧正自身がもう七十すぎの老人であるから、断るまでもなく、世にはいない人だが、宇治の亜相と人びとから愛称され、皇后宮大夫をも勤めていた宇治大納言隆国であった。

隆国は、関白頼通の門をも、馬で乗り通ったというほどだから、公卿に似あわない面がまえの男であったらしい。が、多病で――などといいたてて、早くに、堂上仕えをやめ、夏は、頼通の別荘、宇治の平等院へ間借りして、避暑がてら、「今昔物語」