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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・平家物語(しん・へいけものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 頁

青空文庫

の著作などやっていた。小机のまえに、葛布の単衣をはだけて、へそもあらわにすわりこみ、往来の旅人や、界隈の雑人たちをつかまえては、

(何か、話せ。めずらしいことはないか。なんぞ語れ)

と、耳ぶくろへ入れては、ひとりの童に、大団扇で汗をあおがせながら、筆を執っていたという。まことに、おかしな風格をもっていた人物であった。

僧正は、その隆国の何番目の子かしれないが、とにかく、食べるに困る人ではなく、法衣は着ても、坊主は、ふるふるきらいで、好きなのは、絵であった。絵ばかり描いて楽しんでいた。

その絵も、古今を通じて、類のない絵であった。長く鳥羽にいたので、世人はそれを、鳥羽絵と呼んだ。

さきの白河上皇の前でも、召されて、描いたことがある。図は、たくさんな米俵が、大風で宙に吹ッ飛んでいるのを、大童子や小役人が、アレヨアレヨと、騒いでいる狂態である。

(ははあ、おもしろげではあるが、なんの、意味であろ?)

公卿たちが、いぶかり問うと、僧正は、

(近ごろ、供米のお取りたてが、余りにも、きつ過ぎるとて、下じもでは、俵のうちに、いろいろな思案でもつめこんで、供出するしかないというておる。