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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

(よい子だ、留守をしていてくれい。留守居は、戦場に出る者よりは、大役なのだ)

と、だまし、すかして、出て来たのである。

ところが、その手にはのらないよ――といわんばかりな慶次郎の顔つきである。利家は苦笑の下に、うなずいて、

「せんない奴よのう。それほど見たくば来るがよい。だが、戦場へ出て泣き出すなよ」

と、わざと彼を気負わせて、一気に馬を早め去った。

利家たちの先頭が、城下外の小坂まで来た頃、丹羽五郎左衛門長秀の使者が、かれを追って来て、主人のことばを伝えた。

「取りあえず、村上次郎右、溝口金右の両名に、兵三千人をそえ、お供を申しつけおきましたゆえ、御軍勢の端にお加え下さるように」

すると利家は、好意は謝したが、従軍は断わった。

「せっかくのお思し召しではあれど、利家、利長ともに、十死に一生をも期しておりません。むしろ、丹羽殿のお手勢は、あとに残って、万一の一揆や裏切りなどに、お備えあるならば、それも利家の強味と申すもの。何分、留守中のことのみお頼み申しおく」

この時、戌の下刻(午後九時頃)ごろ。

利家はいよいよ駒を早め、百坂、森本、二日市あたりでは、途中から思い思いに加わる郷土所在の武者を入れ、行くほどに、人数を増して、十二日未明、津幡の城下についた。