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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

「おや、佐々か」

と、けろりとした顔つきで――何しにお見えかといわぬばかり。

成政は、拍子抜けした。

だが、それだけに、むかっ腹を、語気にあらわして、露骨にいさめた。

「聞けば、秀吉と、和睦なされた由でござるが、もってのほかな御量見ちがいです。きゃつの姦計に陥ち給うて、後悔のほぞを咬む日を待つよりは、来春、ふたたび徳川殿に頼まれて、大坂表へ打ってお上りあるべしでござる。御一左右次第、この成政も、北国より攻めのぼり、きっと故右府様(信長)のお心を安んじ奉るでございましょう」

信雄は、成政のねちねちした口吻や、忠義だての押売りをうるさそうに、

「まあ、そう申すな。秀吉とて、気のよい男、そう憎むべき者でもない」

とか、また、

「成政、飲まぬか。正月は旅で過ごすつもりか」

などと、さっぱり、話に乗って来なかった。

秀吉や家康さえかつぐ者なら、自分も一つこのお人よしをかついでやろうと思ったが、信雄も、成政の弁にはなかなか担がれそうもない。

成政は、暇乞いの折、一首の歌を信雄に示し、「春を待って、重ねてまた――」と立ち帰った。

歌には、

何事も変りはてたる世の中を

知らでや雪の白く降るらむ