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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
……イヤ何、知ったのは、幸いにも、それがし一名。たれも、気づかぬことでもあれば、その辺も、御懸念なきようにと、もいちど、御主人へお告げ下さい。会うて、御迷惑は、決してかけぬ」
数正の家臣は、伝右衛門の行き届いたことばと、そして何もかも洞察しているらしい口吻に、強って、虚構も云い通せず、ふたたび門内へ入って、彼を外に待たしておいたが、ようやく姿をあらわすと、今度は、
「では、ともかく、お通り下されい」
そこの小門から邸内にみちびいた。
はいると、広いやしき内のそこここに、紙燭や短檠のにぶい光がゆらめいているのが見え、室によっては、襖なども取り外され、何事か、この一軒の中に、大きな変事が起りつつあることを、それらの“ものの気配”が明らかに語っている。
が、伝右衛門は、何事にも、横見もせず、みちびかるるまま、奥へ奥へと通って行った。
家臣が、先に、一室にはいり、何かささやく声につれて、たしかに、主の数正のことばで、
「……そうか。これへ、御案内」
と、いうのが聞えた。
伝右衛門は、はいるとすぐ、消えがてにまたたく燭台を横にして、半明半暗のさかいに、氷室のような部屋の寒さにじっと耐えて坐っている六十がらみの一個の老武人をそこに見出した。