輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
考えれば、理由はない。
あるのは、自分の幻覚の檻だ。主従、信節、情義など、武門生活の約束だけだ。――だが、百度にちかい戦場を往来し、髪の白くなるまでその中に生きて来て、果たして、ほんとにそれの美しい約束が、同僚、知友のあいだにも、実行されて来たろうか。――徳川家第一の武勲を積んだ晩境の自分に今やむくわれて来たものは何か?
(これが、それか)
憤りがこみ上げてくる。そしてふと、晩節何かあらん、命みじかし、楽しまずして何の人生ぞや――と、拳を膝に思いつめもしたが、そんな時、怒る思いとは反対に、この老武人の眼は女のような涙にボロボロ濡れるのであった。
(もし、数正が、岡崎を去ったら、御主君のお心は、どんなであろう。不忠不義の人でなしと、数正を、お憎しみあるか。惜しや、堪忍をやぶって、ついに去ったかと、お嘆きあるであろうか)
彼はやはり檻の中の武人であった。帰するところ、主従のきずなが断ちきれなかった。しかし、そういう妄念を抱いてからは、家康のていを見ても、何となく、冷たい主人に見えて来た。どう尽しても、命を捧げるまでやっても、この人は、どことなく冷たい。