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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
「お師匠さまでいらっしゃいますか」
と、すこし席を退がって、両手をつかえ――
「わたくしは、二の丸に、つい先頃から、お末奉公をいたしております、於通と申すものでございまする。夜ぶんあがりまして」
「いやいや。夜でなければ、宅におりませんからの」
「秀吉様から、おことばがあって、当分、永徳の家へ行っておれと仰っしゃいますので、参りました」
「絵師になりたいお望みか」
「ご厄介ついでに、絵なども、習っておいてもよいかと思いますが」
「ははあ……」
呆然とした時に、よくこんな語が思わず出るものである。ついでに絵なども習おう――といわれたには、かれも、少しまごついた。
だが、一生をかけても、女絵師になろうなどという志願者よりは、始末がいいことは始末がよい。
永徳は大坂城普請の始まりから、命をうけて、城中へ通っていたので、その間に、秀吉の家庭、閨門のうわさまでを、ずいぶん、聞きたくもないことまでも、聞かされている。
この、於通という少女のことにも、城中では、うわさがあった。
秀吉は、先頃の帰りに、この美貌で才はじけた女性を、小牧の蝶々と呼び、こんどの拾い者だと称して、得々と大坂城へつれ帰ったのではあるが、はしなくも、それから数日後、北の丸の寧子夫人とのあいだに、何か、問題になり、秀吉の老母のことばもあって、於通を、二の丸の台所