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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
死に赴くことなら余人でもする。敵を説く使者はそんな生やさしい肚では難しい。死にもならず、生きて帰ることもなおできず、という境に性根をすえて説かねばならぬ。吉川経家も中国では誉れのある武将。しかも秀吉の大軍につつまれながらも、きょうまでの長日月を、かくの如く立派に守りとおしている者だ。それを説く。戦よりは難しいぞ」
秀吉のいうところを、茂助は、両手をつかえたまま、耳朶の充血してくるほど、熱心に聞いていた。
「御意。よくわかりました。めったに生命は捨てぬよう、ただ懸命をこめて、行って参ります。お使いを果して来まする」
「よし、行け」
茂助は、いちど自分の陣所へ退った。それから身支度をすずやかに改めて、ただ一人で敵の城中へ赴いた。
寄手の使者が来たというので、吉川経家は、
「ともあれ、会おう」
と、城中の一間へ彼を引いた。
かかる使いに、茂助はまだ不馴れである。また、特に弁舌の士でもない。
そしてなお、すでに、この城は持ちきれないことも、目に見えている敵ではあったが、秀吉から云いふくめられて来た通り、茂助は、礼を篤うして、飽くまで敵の善戦を敬い、慇懃、理をつくして云った。