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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
その憂いが、果たせる哉、佐久間追放の罪状のひとつとして、世上に喧伝されたので、
(ふたたびお叱りのあらぬうちに――)
とばかり、極く近頃、茶杓や袱紗いじりをし始めた諸侯までが、折角の志を急に変じて、
(茶などは知らぬが無事)
とばかり、遠ざかってしまったのが、ここすくなからずあるらしい――という下火をあらわしていた。
だから自然に、茶事の往来も聞かれず、堺や京都を中心として、いわゆる「茶家」と呼ばれている者の門戸までが、ひっそりとしてこの道のさびれを思わせていた折に、千宗易のすがたがここで見られたことは、久々の珍しさというよりは、それに心をもつものにひとつの明るさを感じさせていたにちがいない。
――今朝、その宗易は、疾くから、安土の園内の茶室に入って、ひとりの茶弟子を手伝いに、しきりと室内の拭掃除から露地の清掃まで自身の気のすむまで心を入れてしていたが、やがて炉の灰も見、道具のかざりなども終ると、
「一応、御内覧をねがいまする」
と、信長の室へ来て、それの終ったことを告げた。
信長は、うなずいて、すぐ共に起った。茶席は六畳であった。茶入れかざりには秘蔵の大海が出ている。