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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

「遠い異国のことに、左様に詳しい輩がおりますか」

「おる」

「ははあ。宣教師ですな」

「ちがう、ちがう」

と、信長は手を振って、

「きょうは茶事。その儀は、あすの夜の馳走にしよう。あすの夜、渡られい」

と、笑った。

間もなく、お正客の秀吉たちは、亭主の信長と宗易に見送られて、茶庭の柴折門から退った。

松落葉のしっとり積んだ道に、針葉樹の梢から陽がこぼれている。いま茶席の柴折門を辞して、安土の庭を戻ってくる秀吉の影を慕って、

「もし、もし。……殿さま」

と息せいて追って来た者がある。

秀吉は歩みをとめて、その男を眼の前に待った。葛布の小者袴に藍木綿の肩衣を着ていた。秀吉の足もとへ来て額ずくなり両手をつかえたまま云った。

「お久しゅうございました。茶わん屋の福太郎でございます。長浜からおいとまをいただいて去った――」

「おう、於福よな」

秀吉は膝を折って、共にそこへ跼まりながら、まるで身寄りの者に親しむように、

「達者か。さてさて、どことなく、物腰までも変ったのう。その後は、堺の宗易の門に入って、茶道修行に身を入れておるそうな。秀吉も聞いて安心したぞ。……勉強せいよ、一筋に」