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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

と、褥を退け、そしてなお起ちもやらずに、

「申さば、世間の毀誉褒貶、これはたれにも、避けられぬこと、また歯牙にかけるにも足らぬことにございましょうが、最前も仰せのごとく、衆口金を鎔かすのたとえもある。慎まねばなりません。……何とぞ、やくたいもない一儀は、以後、お耳にふれるごとに、唯今のごとく、お笑い捨てくださるように」

「心得申した」

こんどは真面目に、深々と相手へ同情の眼を凝らして、

「御辺にも、余りに深くお気にとめぬがよろしい。僭越とお叱りなくば、この筑前のごとく、物事にちと無神経でおられたら――と申しあげたい」

「それは常々おうらやましく存じておる」

「では」

と、促して、

「こよいは、これより御礼のため登城いたしますから」

「長座仕った」

主客一しょに起って、書院を出、玄関のほうへ共に歩いて行った。

草履を穿いてからも、山門の外の駒つなぎまで、なお肩を並べ合っていた。光秀はなおもっと早く、もう少し時間の余裕を見て、この人を訪わなかったかと悔いているふうだった。

「さあ、お召しなさい」

先へ、駒をすすめて、秀吉は佇んだ。なおここまで主客の礼儀をとっているのである。