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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
月をこえて、二月の四日頃だった。
所詮、この程度どころでない大悲報が諏訪へはいって来た。このときの混乱と騒擾と、武田方の生色を奪った愕き方というものは、けだし信玄以来の甲州人としては覚えがない程なものであった。
諸地方からの早馬や物見の者など、いちどに諏訪口からここの陣所へ混雑して、口々にいうところは皆、次のように一致していた。
「安土の信長、織田麾下へ、急に出動の令を発し、すでに、信長自身も、江州を出たとのこと」
またいう。
「――駿河口よりは、徳川家康の手勢、関東口からは北条氏政の兵、また、飛騨方面から金森飛騨守、呼応して、いちどに甲州入りを目ざし、伊那口には、信長信忠の父子、ふた手にわかれて、はや乱入と聞えわたり、高き山に登ってみますると、東、西、南――いずれを眺めても、濛々たる薄煙が、遥かに望まれておりまする」
「……信長が! 家康が! そして北条氏政までが? ……」
愕然、勝頼は、腰をついたように叫んだ。
諜報の報告どおりに聞けば、自分の立場は、すでに袋の中の鼠にひとしい。
つい、七十日ほど前ではないか。――親切をこめて、わざわざこちらから信長の質子を安土へ送り返してやったのは。