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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
領下の庶民の間には、信玄時代の政治よりも悪くなったという声もある。重税を課されたのがその重なる原因とみられる。けれど快川がみるに、勝頼は決して、自分の贅や驕りのためにそれをしたのではない。悉く軍事に向けているのである。武器、戦法、あらゆる文化も、中央はもとより四隣の国々まで、ここ数年間に、長足に発達し、銃器火薬の購入だけでも、信玄時代の支出程度では、到底それらの国々と伍しては行かれなくなっていた。
「お身を大事になさい」
快川はやがて辞しかけた。
「はや、御帰山ですか」
勝頼はなお問いたいことを胸いっぱい抱いていたが、松籟颯々、呼びかけても、答えは同じものしか聞かれないことを察して、
「これが、最後のお別れやも知れません」
と、両手をつかえた。
快川も、数珠をまとった指を、下について、
「おさらば」
と、いった。否とはいわずに帰り去った。
高遠城
「いざ、甲山の春を探って、桜を狩り草を摘み、帰路は東海に出て、富士見物などして来ようか」
出陣のことばに、信長はこんなことを云いながら、安土を立った。
こんどの甲州入りには、充分な勝算があったらしく、どこか悠々たる門出だった。