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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

よよと泣き縋ったり取り乱したりしているのは、彼女をめぐる女房たちであった。彼女らは口々に、

「こんなことになるものなら、いっそ新府のお館においで遊ばした方がましであったもの。お傷わしゅう。これが武田の御簾中ともある御方のおすがたか」

「生れては、北条家の姫様として、珠のように愛しまれ、嫁いでは武田四郎勝頼様の御簾中とも仰がれた御身が……」

「まだ御年も十九というに」

などと限りない悲嘆と悲嘆を交わして、果ては人目もなく声を放って泣きみだれる上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)さえあった。

「奥方。奥方」

勝頼は、その妻を顧みて、

「いま、小原丹後に、馬をいいつけたぞ。いつまで、これにいても名残はつきず、はや敵も麓近う迫って来たという。――ここは相模の都留郷にも近いと聞く。そなたは、はや去るがよい。山を越えて、相模の実家親が手許へ帰れ。北条方の骨肉たちは、よも悪うは計るまい」

と、急きたてた。

「…………」

夫人は眼に涙をいっぱい溜めてはいたが、決してここを起とうとはしなかった。却って、その眼は良人のことばを恨んでいるかのようだった。