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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

寺中のひとすべては、本堂を立ち退いて、楼門のうえに上っていたからである。

「あれだッ。あれにおるわ」

河尻肥前守と織田九郎次は、馬をならべて、鞍上から指さしている。むらがった兵たちも首をあげてそこへ眸をあつめた。驚くべきものをそこに見たような眼いろである。凝視したまま、しばしがほどは、みな心をうつろにしていた。

山門の楼上、正面には、朱の椅子に倚り、紫衣金襴の袈裟をつけた老和尚のすがたが見えた。いうまでもなく一山の長老快川国師である。

左側に、雪岑、また藍田、右側には大覚和尚。そのほか老僧十一名、弟子僧数十人、生ける羅漢図のようにずらりと並んでいた。いやまだ、そのほかにも、寺中の老幼、稚子、堂衆まで、ひと目に数えても百五十人に近かろうと思われる人々が、恐ろしげに、幼きは老いたる者へ、老いたるは若者へ、抱き合ったまま竦んでいた。

「和尚ッ」

馬上から肥前守が呼んだ。

快川は、答えない。

織田九郎次が、また呶鳴った。

「快川ッ。あざむいたな」

白い眉は動きもしない。

「焼き殺せッ」

河尻肥前守が、叱咤した。山門の下には柴、薪、焼き草が積みあげられた。織田九郎次は、馬を跳び下りて、ためらう兵を叱った。