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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
滂沱と、ふたすじの、白いものが、官兵衛の頬にもながれたとき、少し離れて、街道を見まわしていた渡辺天蔵は、
「てまえは、お先に参ります。はや御身辺も安心ですから、後よりごゆるりと」
と、告げて、先へ立ち去った。
官兵衛は、腰をおろして、さて三名にむかい、手をも取らないばかりにいった。
「よろこんでくれ、このとおり身はふたたび天日を仰ぐことができた。天まだ官兵衛を見すてたまわず、この官兵衛にも、なお世にあって、なすべき事あれとのおいいつけあったものと深く思うておる。――伊丹の獄中にあるうちは、よもそち達が、城下にあって、そのようにわが身のため、苦心していてくれておろうとは、ゆめ気づかなんだが……幸いに、秀吉どのから遣わされた渡辺天蔵と、竹中どのから向けられた栗原熊太郎の両人の手で救け出された。それもこれも、後に思いあわせれば、陰にあって、そち達が、あらゆる策を講じてくれたおかげであった。手をつかえて礼ものべたい。どう謝してよいか、ことばも見出せぬ。ただただこの至らぬ主人に対してそちたちの忠節は辱いと申すしかない。――ただこの後は、天意によって保ち得たこの余命を、いかに使うべきか、いかにそち達にも酬うべきか、それしか今は考えられぬぞ。