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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
馬好きな信長としては何物にもかえ難かろうに、それをしも割愛して贈ったのは、誠意にたいして誠意を見せたものであろう。家康もまた、心ひそかに、満足を抱いた。
譎詐権謀を常道としているこの戦国に、二十年来、あざむかず、またあざむかれず、同盟のよしみを持ちつづけて来たものは、決して双方の利害だけによるものではない。信長も真実は知る人だった。家康も真実を尽した。氏政のようなごまかしをもってこの動流変貌の烈しいときを渡ろうとするような、あぶない芸当はする気もなかった。
明ければ、十三日。
信長は、払暁すでに、大宮を立って、浮島ヶ原から愛鷹山を左に見て進んでいた。旅行中も、寝るには晩く、起きるには夙い信長だった。朝の食事嗽いなどは暗いうちにすまし、宿舎を立ってから、一、二里も行った頃、ようやく、日の出を見るのが、ほとんど毎朝の例であった。
日々の行軍、日々の風流は、このときも随行していた信長の祐筆太田牛一が、その「信長公記」に克明に書いている。却ってその原文に見るほうが、髣髴と当時を偲ばしめるものがある。
四月十三日。払暁ニ大宮ヲ立タセラレ、愛鷹山ヲ左ニ御覧ジ、富士川ヲ乗越サセラレ、蒲原ニ御茶屋ヲ構ヘ、一献進上候也。