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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
夜は白み、鶏の声が遠くする。いつか四日の朝となっていた。
恵瓊も応じない。彦右衛門も譲らない。
時はいたずらに経つのみで、和談はすこしも進んでいなかった。のみならず行詰まると、
「では、ぜひもない儀」
と、まま物別れになりそうな危局にさえ度々落ちかけた。
恵瓊も毛利側の君命をふくんでいる者だし、彦右衛門ももとより秀吉の肚を肚としての交渉であった。しかもこんどは、めったにこの交渉を物別れにさせてはならないのである。その容子を、恵瓊は僧侶特有な眼でじいっと見つめては、根気のよい口調でぼそぼそと果てしなく同じことを繰り返していた。
「それがしの器量ではもう貴僧との折合いは見出し得ぬ。ここはひとつ黒田どのに代ってもらおう。貴僧もよく御承知のある黒田官兵衛どのともう一応、じっくりと、はなし合うてみるおつもりはないか」
「だれとでも熟談いたそう。野衲のねがう和議に、すこしでも目鼻のつくものならば」
「家政――」
と、夜半から次にひかえたままでいる子息を呼んで、
「もうお目ざめの頃、黒田どのを迎えに行ってくれい」
と、いいつけた。
家政はまもなく官兵衛を伴って来た。官兵衛は四名の家臣が支え上げている手輿の上に乗ってやって来た。