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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

「げッ」

――仰天して、

「ど、どこに?」

「三十郎。お館はここにいらっしゃる」

茂朝は、馬の鞍覆に包んで抱えていた光秀の首級を彼に示し、暗然と面をそむけた。

「おおッ」

と、彼は烈しい勢いでそれへ跳びついた。主人の首級にむしゃぶりつくや否、おいおい声をあげて慟哭した。

「さいごのおことばは」

「順逆無二門――の一偈であった」

「順逆無二門――と仰っしゃいましたか」

「たとえ、信長は討つとも、順逆に問わるるいわれはない。彼も我もひとしき武門。武門の上に仰ぎ畏むはただお一方のほかあろうや。その大道はわが心源にあること。知るものはやがて知ろう。――とはいえ五十五年の夢、醒むれば我も世俗の毀誉褒貶に洩れるものではなかった。しかしその毀誉褒貶をなす者もまた一元に帰せざるを得まい。……そんな御鬱懐を吐かれて御自刃遊ばした」

「わかります。……わかります」

――三十郎はしゃくり上げながら、拳で顔じゅうの涙をこすった。

「戦巧者な斎藤どのの諫めもお用いなく、みすみす不利な地形と寡兵をもって、山崎に決戦を辞さなかったのも、その大道に拠られたためです。山崎を退いては京都を捨てることになるからです。